FC2ブログ

瀬戸口廉也氏の新作執筆について思うこと 

 『キラ☆キラ』(OVERDRIVE)を最後にエロゲ業界から離れていた瀬戸口廉也氏がまた18禁ノベルゲーの世界に戻ってくるようです。皆さんご存知の通り、彼はここしばらく唐辺葉介名義で一般向け作品の執筆に当たっていたわけですが、わざわざ名義まで昔のものに戻すのだとか。
 『BLACK SHEEP TOWN』(BA-KU)

 加えて、OVERDRIVEのFINAL PROJECT作品の脚本も手掛けるようです。まだ公式発表はなされていませんが、ライブの場で告知されたという噂が否定されていないところを見ると、本当である可能性は高いと思われます。

 以下、これらのニュースに関する個人的所感。あまりまとまっていません。


 これまで瀬戸口廉也・唐辺葉介両名義で発表された作品については全て読んでいる私ですが、ここに来て「瀬戸口廉也」名義で作品を出すことについては、ちょっと「今更」という気がしないでもありません。
 というのも、私は「自分の意志でそこを後にしたはずの人が年月を経て元の場所に戻ってくること」をあまり肯定的に受け止められないからです。それは、とある作品を読んだからなのですが・・・。

 『キラ☆キラ』には本編で使用していないものも含めて多数の楽曲があります。その中にHAPPY CYCLE MANIAの『Samsara』という曲があります。タイトルの意味は「輪廻」らしいです。実際に詩を誰が書いたのか知りませんが、私は、この曲はまさに瀬戸口廉也その人のことを歌っていたのではないかと邪推しています。

何度も君の名前呼ぶ
返事は返ってこないけど
ねえ約束憶えている?
僕は待ってる

何度も君の姿探す
近づいてはまた消えていく
どこかに置き忘れたままの
夢を見る

過ぎし日々をポケットに詰めて
そろそろ始めようか my life
もしまたどこかで逢えるのなら
あの日の君でいて

ほら 月が眠る さあ・・・

ちゃんと僕は伝えられた?
ありったけの愛を込めて
君が言った「いつか・・・」は僕が
「今」 に変える

響き渡れ この愛の歌
二人の時計が止まっても
もしまたどこかで逢えるのなら
あの日の僕でいよう

ほら 太陽が目覚める さあ・・・

響き渡れ この愛の歌
二人の時計が止まっても
もしまたどこかで逢えるのなら
新しい僕がいる

太陽が また目覚める さあ・・・

 個人的には、「瀬戸口廉也」が昔と同じものを描くことを望んではいません。「新しい僕」を見せて欲しい。そうでないと、ただただ生きていたというだけではないかと。きらりシナリオ(一周目)における鹿之助のような姿を今更見せられたところで、逆戻りのような気がするのです。



 私が瀬戸口廉也作品について腑に落ちたのは、自分が彼の作品の根っこを「好きではない」ことに気付いてからでした。気付くまでにしばらくかかりました。
 もちろん、彼の筆力については言うまでもなく、私だって彼の作品には圧倒されたのです。でも、それは「好き」であることと同じではありません。その差を意識するようになって、私はようやく彼の作品との距離感を保つことができるようになったような気がします。

 あれだけ徹底して人と人との間の隔絶と「それでもなんとかやっていけるんだよ」とでも言うような慰めなのか残酷な現実なのかを見せられて、「面白かった!」なんて言うほど私は割り切れません。彼の描写を全くの「他人事」と捉えることも難しい。
 個人的に、瀬戸口廉也が彼の作品で導いてきたものは「絶望」に他ならないんじゃないかと思うんです。

柚香 「いいえ、嬉しいですよ。ありがとうございます。でも、うーん、そうですか。全然知りませんでした。私が絶望しているなんて、困ったな。自分で気がつかないなんて、そのあたりがなんというか、酷いですね」
司 「酷いですか」
柚香 「ええ、しかも、それどころか、私、これ、結構前向きな意見のつもりだったんですよ。こんなふうに考えれば、もうちょっとみんなは幸せに過ごせるんじゃないのかなって」

司 「そんなに馬鹿でもないとは思いますが」
柚香 「そうなんですか? でもやっぱり、おかしくて笑っちゃいますよ。あははは。だって私、あやうく、絶望の思想を嬉しそうに人に押しつけちゃうところだったんですよ? そんなの、本当なら自分の中に仕舞ってずっと黙っておかなきゃいけないことなんですよね?」
司 「言いたいことがあるなら、言えばいいと思いますよ。ここで話して貰えるのなら僕は聴きます」
柚香 「えーっ、そんなの良いですよ。私、出来るだけ、みんなには本当の幸せを手に入れてほしいんです。尼子さんにも」
司 「そうですか」
柚香 「でも、難しいな。知ってますか。希望を持つって苦しいんですよ?」

 『SWAN SONG』(Le.Chocolat meets Flyingshine)




 とはいえ、私的には、このまで数々の瀬戸口廉也/唐辺葉介作品を経て、自分が「何を見たいのか」を自覚できたような気がします。その分、氏の作品と距離を取れるようになりました。

 もう一つ、瀬戸口廉也氏を介して竹宮ゆゆこ作品を知ったことも大きかったです。
 トークイベントで瀬戸口作品について竹宮氏が「文章は上手だけど作品はキライ」と評した(らしい)と聞いたことがきっかけで読み始めたら、これがまたちょうど瀬戸口作品と対照的な作家ででした。『とらドラ!』は人がその内に抱える想いとそのディスコミュニケーションを如何に克服するかという作品ですし、『知らない映画のサントラを聴く』は喪失を経て如何に前に進んでいくかという作品です。両者は「瀬戸口廉也」に欠けていたものかと。

まるで動けない あと一歩踏み出せない
本当なのかな? 「動かない」だけじゃない?

 もう一つ『キラ☆キラ』紗理奈シナリオの作中曲「t r a v e l r s」の歌詞を抜粋。私が「瀬戸口作品」に不満なところは、まさにここなのです。
 紗理奈シナリオは『キラ☆キラ』の中では少し異色で、(瀬戸口氏にしては珍しく)非常に前向きな内容だと思っているのですが、構成上、メインのきらりシナリオでその方向性を覆してしまいます。彼は最後までそれを押し通せない。その前で止まってしまい、それでもなお大丈夫だと強がるんです。でもそれって、「動かない」だけなんじゃないかと思うんです。この点が、竹宮作品はまるで違う。



 そういったところも踏まえて、瀬戸口廉也/唐辺葉介作品で私が最も「好き」な作品は、『ドッペルゲンガーの恋人』なんです。多くの人が「彼らしくない」と感じる作品かもしれませんが、それが私は最も「好き」なのです。
 
 既に削除されてしまったようですが、最初に挙げた新作のTwitterアカウントには、こういう記載があったらしいです。

これから始まるのは血と暴力で彩られた物語であるが、筆者はどうしてもこの平和な披露宴の、この満ち足りた花嫁の笑顔から、稿を始めたかった。(BLACK SHEEP TOWN)
— BLACK SHEEP TOWN公式 (@blacksheeptown) 2017年3月31日

 さて、新作はどういう形を取るのでしょう。たぶん完成すれば読むことは読むと思います。もし昔と同じものが描かれるのであれば、「これは違う(と思う)」ということを形にできればそれはそれで良し。昔と違う形で自分に納得のいくものが出てくるのであれば尚更良いでしょう。


skin presented by myhurt : BLOG | SKIN

FC2Ad

  
copyright © 2005 狼になりたい all rights reserved. Powered by FC2ブログ