『おまえのすべてが燃え上がる』(竹宮ゆゆこ) 

 

 竹宮ゆゆこ氏の新刊。
 以下、ネタバレを含みます。


 個人的には、割と早い段階で「ああこれは『海の仙人』(絲山秋子) のオマージュかなあ」と感じました。そもそもあの本を読んだのが竹宮氏のコメントに由来するものだったので尚更です。

 ただ、「向き」が少し異なると言いますか、「竹宮色」が強く出てきたように思えます。それはつまり「ファンタジー」を肯定するのかどうか、でしょうか。最終的にそこへ辿り着くのかそれとも解消していくのか。それが人に必要なものなのか、それとも必ずしも頼る必要がないものなのか。構造の近さの割に、こうした点での方向性の差異も際立って見えました。



 帯に「恋愛小説」と書いてあるのですが(注:カバーには書いていない)、それがちょっと的を外しているような気がします。

(P170)
たった一滴だ。
ほんのわずかな、たった一滴。
もうなにも絞り出せないと思っていた私の心のどこかから、その一滴が、ぽたりと自分の裏に落ちた。
(どうしてそんなにつらそうなんだよ)
それを知りたい気持ちは、多分、友情……と呼ぶべきもの、なんだろう。

(P261)
私は青葉さんのことが好きだ。
青葉さんを好きだと思っていることを、知っていてもらいたかった。そういう人間として、青葉さんの世界に知ってもらいたかった。一緒にいると楽しくて、助けてもらえて嬉しかった。それから尊敬もしている。素晴らしい人だと思っている。この気持ちを伝えることはもうできないのだろうか。

(P294)
醍醐とは、ずっと友達でいた。

 たぶんこれは作者の意図的なところだと思うのですが、信濃や醍醐のその後を描く上で、二人が付き合った相手のことを極めて淡白に描写しています。それを経ても引き続いた信濃と醍醐の関係は、婚約とか結婚とか家族とかではなく、かつ(個人的には)「友情」という言葉とも完全に合致しないイメージ。言葉として形作られた定型的なものとはまたちょっとの違った関係を描いているのではないかと思うのですが、どうでしょう。


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