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「同人誌」について思うこと 

 あくまでも「読む」ことしかしない私の個人的意見です。


 Twitterとかを見ていると、某印刷会社2020年の東京オリンピックの開催時期において東京ビッグサイトが同人誌即売会に使えなくなることを訴える意見をよく目にする。ところが、私としては彼らの意見を聞くたびにむしろそれに納得できなくなっていった。

 というのも、「なぜ同人誌を紙で刷らなければならないのか」という根本的な問いに疑問を感じてしまったからである。



 私は商業作品と同じように同人作品を読む。そこにジャンルとしての偏見はないつもりで、逆に、両者は基本的に同じ土俵に立つものだと思っている。要は私にとって魅力ある作品であるかが大事だ。
 
 では、商業作品とは違う意味での「同人誌の存在意義」が何かというと、やはり、その裾野の広さだろう。いきなり商業誌でデビューというのは作家の人生にとってもなかなかに荷が重く、まずは少部数・小規模の創作から始めていくのはごく自然な流れだ。
 だがそれも、コミケが始まった20世紀と今では大きく状況が異なっているのではないか。

 1970年代に始まった最初のコミケにおいて印刷は必至だった。というのも、当時は自分の創作物を形にするためのプリンターもコピーもディスプレイも普及していなかったからだ。印刷は必然だった。
 しかし今になって印刷が「不可欠」なのだろうか。イラストに関しては、ほとんどの作家がデジタルで描いているものを、わざわざ紙に落とす必要があるのか。正直、同人誌の印刷レベルはそれほど高くなく、いつもPCを通して「生」の原稿を見ているのに比べると、紙の同人誌の質感がイマイチだと感じることは多いイラストに関しては明らかに「劣化」なのである。
 (あと、イラスト・コミック系の同人誌は「薄い本」とよく言われるように24P程度のため背表紙が作れず、紙での検索性が非常に悪いのも個人的には大きなマイナス。)

 そもそもの「場」の問題もある。1970年代に非商業の作品を取り交わそうと思ったら、そりゃあ一つの場に集うしかない。しかし、今やこれだけインターネットが普及して、むしろリアルを介する方が少なくなっている中で、本当に場所が必要なのか。インターネット上で告知して、インターネット上で広める、その方が遥かに容易で素早くマルチに対応できるのではないか。

 これは創作をしない私の想像だが、未だに同人誌即売会が続いている理由として、「作品の表現形態として紙で印刷するのが最も適切だから」というのは、インターネットとデジタル作画が普及した時点でもう既に失われていると思う。文章であっても、Blogなどのホームページ上で表すツールは沢山ある。
 さらには、同人誌販売を仲介する企業が成立し、最近は通販を行わず現地へ行かないと絶対に読めない作品の割合もかなり減ったように思う(注:肌感覚)。



 しかしそれでも実際に毎週のように何らかの同人誌即売会が行われているのは一定のニーズがあるからで、それが何かというと、「人と人とが面と向かい合う」ことの価値と、後は「金銭のやり取り」ということになろう。

 年に数回の同窓会的な場としての価値は、よくわかる。やっている本人は楽しいだろう。だけど、実はそれが作品の質に何の影響も与えないことも事実だ。
 もう一つ、金銭的なやり取り、これも気持ちはわかる。自分の評価がお金で帰って来るのは嬉しいものだ。インターネットでの公開でお金を取るのはなかなか難しいのだが、同人誌だと(なぜか)皆さん500円ずつ払ってくれるのである。

 だが、繰り返すが、こうした正の価値も含めて、紙での印刷と同人誌即売会という「場」の用意がそれほどまでに必要なのだろうか。

 「紙で出すことで作品としての質が上がる」という作品はよほど特殊で、同人誌の多数を占めるイラスト・コミックの場合は今のデジタル時代にはむしろ劣化が避けられない。小説なら手元に確実に残せる形とする意義はまだあるかもしれないが、電子書籍の普及が徐々に進んでいるのも紛れもない事実。

 「実際に作品を取り交わす場所」に関しては、金銭のやり取りと大きく関わっている。「同人」が「非営利」の意味ならば、印刷代という大きなコストと在庫リスクを回避する意味でネット上での開催の方がよほど意義があると思うのだが、実際には紙を介することで一定の利得が発生している模様なので、有料サイトがあまり伸びない今の日本ならこちらが志向されるのかもしれない。
 ただ、この「場」を用意することによる作品の質への影響は、本来的にはあまり無いはずだ(儲からない同人なんて描かないよ、という作家であれば確かに影響するだろうが)。



 正直、特にイラストに関しては、その形態だと金銭を取り交わすことができるという理由以外に、わざわざ紙にして有明で交換する理由がわからない。

 紙の方が僅かでも綺麗に見えるというのならばまだしも、繰り返すがデジタルの時代にそんなことは決してない。というか、この文章を書いた第一の理由が、通販で届いたイラスト同人誌の画質が(PCを通して見るイラストに比べて)あまりにも残念だったからである。
 また、同人誌はお世辞にもコストパフォーマンスが高いとは言えない。その理由として、印刷コストが割高であるという点は否めないのでは。売れるか売れないのか読めない部分があるなら可変費を減らした方がリスクを減らせるはずなのに、なぜわざわざ一部毎にコストのかかる紙での印刷が未だ一般的なのだろうか。

 五輪期間のコミケ開催問題を必死に訴えているのが印刷会社だというのは、こう考えてみると非常に営利的な目的が透けてくる。彼らが本当に恐れているのは、もはや時代が移り変わりつつある中で、下手をするとこれを機に同人誌「業界」の構造が変わってしまうことではないか。彼らは本当に「表現」を求めているのか、それともこれまで通りに彼らの印刷機を活用できる顧客層の維持を狙っているのか。
 逆に言うと、純粋な「読み手」の立場にとって必要なのは、この同人誌という冊子なのだろうか。そうではなく、その「コンテンツ」そのものではないのだろうか。両者は全くのイコールではない。読者は紙とインクに対価を払いたいのだろうか。
 かつて写真はシャッターを切るだけでは価値を殆ど持たず現像が不可避だったが、デジカメの普及はその構造を覆した。それと同じように、今やコンテンツを印刷する必要は必ずしも無いように思うのだが、どうだろう。


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