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『へうげもの』(山田芳裕)・25巻 

 
 偉大な作品がまた一つ完結した。


 本作はフィクションである。言うまでもない。だけど、私的には、今作が日本の戦国時代から安土・桃山~江戸時代の成立にかけての不可解さに対する一つの答えを導いたことも事実。それは、「下克上」に象徴されるあの時代、なぜ諸将はあれほどまでに離反と従属を繰り返していたのかという点だった。
 あの時代において、相反する勢力を一族皆殺しにしたという例もあまり聞かず、多くの武将は織田→豊臣→徳川と異なる系譜の有力者に付き従っている。いずれも、前の政権を打破してそこに至ったにも関わらずである。

 それを、「文化」というキーワードで豪快に括った今作の着眼点と、最後までそれで以て描き上げた点については素晴らしいと言う他ない。諸将個人の文化的な繋がりの存在は、ただ領主としてだけ見た場合にはなかなか実感しがたった側面を見せてくれたように思う。
 信長の華麗さ、秀吉の豪華さと千利休の「わび」の世界。そこから先をどう描くのかは事前にあまりイメージが湧かなかったのだが、古田織部がまさに「美」を「創り出す」ところを見事に見せてくれた。



 今作で最も優れた場面だと私が思う箇所は、単行本4巻の最後にある。1巻から続く各登場人物の紹介の中で、必ず各登場人物の「好きな色」を問うているのだが、ただ一人、徳川家康だけはこう述べている。

好きな色、そんなものはない

 この一言だけで彼については語り尽くされていると思う。今作が歴史に加えてきた価値観と全く相容れなかった存在が彼なのだ。

 そしてこの最終巻。古田織部の切腹は歴史上動かしようのない展開なので、これをどう捌くかは中盤からずっと気がかりだった点なのだけど、今作に終止符を打つのは確かにかの人でならねばならぬ。



 今作の連載中に私も海外へ行く機会が増えた。その中で博物館・美術館へ行くことが多く、彼ら外国人の眼から日本文化はどういう風に受け止められているのかを見ることができた。また、大抵の場合、日本文化はお隣の朝鮮半島や中国大陸と並んで展示されているので、その違いもよく見える。
 その中で、自国民としての贔屓目もあるかもしれないが、日本の戦国~安土・桃山時代にかけての日本文化はいい意味で「異様」に見える。

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 どう表現したらよいのか難しいが、この時期の日本文化は、近隣諸国に比べて明らかに洗練されているような気がする。欧米の視点からオリエントの「変わったもの」として見出されたものと、自分達の「文化」として作られた「文化」との違いでも言うのだろうか。
 よく考えてみると、これが未曽有の内乱期の真っ只中に生まれたのも不思議であり、そういう意味では、今作のような「解釈」もアリなのかもしれない。


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