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『MUSICA!』(OVERDRIVE)体験版α 

 OVERDRIVEがクラウドファンディングプロジェクトとして進めている以下の企画について。シナリオは瀬戸口廉也氏が書くことになっています。
 プロジェクトの概要が発表されるとともに、体験版αが公開されました。

 MUSICA!

 以下の文章は、この体験版αを読んだ上での感想です。あまり肯定的ではない評価が含まれますので、読む場合はそれを承知の上でどうぞ。


 「OVERDRIVEのロックンロールADVシリーズ最終作」とありますが、瀬戸口廉也氏が『キラ☆キラ』以来10年以上ぶりに「瀬戸口廉也」名義(「唐辺葉介」ではなく)で執筆することになりました。

 体験版は、読んで貰えればわかるとおり、音楽という「創作活動」を扱っています。これはまさに『キラ☆キラ』も同じでした。そして、前に書いた通り、私はあの作品においてロックンロールは比喩でしかなく、半分以上(特にメインルート)は創作者として生きてきた作者の自分語りであったと思ってます。

 そういう先入観のある私ですから尚更、今作体験版の序盤においても「創作論」の影を感じずにはいられません。むしろ、ものを創る上での苦悩や周囲の評価との関係性は、『キラ☆キラ』よりもストレートに押し出してきた印象です。

花井「魂を込めた演奏なんて言っても、実際にはそんなの誰にも聴きわけることは出来ない。みんな音じゃなくてストーリーに騙されるんだ」

花井「時間に間に合わせるためにでっちあげた曲が評価されて、自分の魂を削って作った曲が酷評されたりするのもどうでもいいさ。批評家とかはまだしも、熱烈におれの曲が好きだとかいう人がそんなことを言ってると多少はゲッソリするがね。まあ、それだっておれの知ったことじゃない。おれはただ自分の好きな曲を作っていればいいと、ずっとそう思ってやってた」

花井「ああ、理想の音楽環境を実行に移す時がきたんだなって。そもそもおれが音楽をはじめたのは、音を並べて曲を作るゲームを貰ったのがきっかけで、それを自分で聴いてるだけで幸せだったのさ」

花井「それにねえ、もし音楽活動を続けて、いつか奇跡的に自分にとって理想の曲が出来たとしてさ・・・・・・それがおれにとって理想的でほんとうにすごい曲なんだけど、でもそれは誰にも評価されないんだろうなあって、今はそんな気がするんだよね」

馨「本当に花井さんが他人にどう受け止められるかなんて関係なくて、自分の理想の曲を作るだけで満足なら、その曲が出来たらすごく嬉しくて、他人に評価されるかされないかなんてどうでもいいはずじゃないですか? 少なくとも僕ならそう思うはずです。なのに、自分の理想の曲が他人に評価されないことを出来る前から心配してるってことは、自分で思ってるほどすっきり割り切れてないんですよ」

 でも正直、ここは個人的に不満です。物語の序盤であり体験版なので「おさらい」的な意味なのかもしれませんが、その辺はもう10年前に『キラ☆キラ』でやった部分ではなかったかと。

 『サクラノ詩』(ケロQ)の時もそうでしたが、私は創作者が創作物で創作論を述べることにそれほど肯定的ではありません。サラリーマンが仕事の大変さを述べているようなもので、それは作者にとって最も身近なものでありスタート地点なのかもしれませんが、読者(私)にとってはけっこうどうでもいい話です。特に、もう『キラ☆キラ』から10年経っている以上、今更やる話だとは思えません。
 いいから、「絵」を描きましょう、「曲」を作りましょう。「"絵を描くこと"や"曲を作ること"を描く」のと、「絵や曲自体を作ること」は別物です。音楽の神様が居るか居ないか、なんて私的にはどうでもいいことで、そういった疑念を振りほどくために創作をして欲しい・・・と思うのです。

花井「本当に音楽が純粋に人の心を揺り動かすことなんかあるのだろうか?」

花井「ねえ対馬君。原稿にはっきり書いてくれよ。花井是清の作った曲は、どれ一つとっても小指の先についた鼻くそほどの価値もないゴミだけだってね。だから喜んで聴いている連中は早く目を覚ませって。おれの口からは言えないんだ」

 自分の口からは言えないとして、じゃあ読者にこの言葉を肯定して欲しいのでしょうか。それとも否定して貰いたいのでしょうか。

 体験版の終盤で、花井は自死します。花井は言葉と疑問だけを残しました。
 今作のテーマが、残された馨が三日月たちとともに真っ向からそれを否定していくための物語であるのなら、「創作論」を超える「創作そのもの」であるのなら、私は今作を肯定します。
 「それが出来ないことの証明」なんぞ微塵も望んではいません。「人の心を揺り動かして」ください。出来る出来ないとかではなく、それが最終目的なのだと思うのですけれど。



 じゃあこれに投資する価値があるか、というと。
 正直、最も理解し難かったのが、クラウドファンディングについて書いてあるこのページです。

 良い作品(になりそうなもの)にお金を出すという考え方については全く否定しませんが、18禁版がご褒美かのように記載されているのはどうしてなんでしょう?
 瀬戸口廉也氏が唐辺葉介氏に名義を変え、全年齢対象で書くようになって、魅力が落ちたのでしょうか。ここは人によって評価が分かれるのでしょうが、瀬戸口廉也/唐辺葉介という作家に求められているのがヒロインとのエロシーンだとは思えないのですが・・・。

 これは過去に何回も書いてますが、エロゲーの利点は「エロを描けること」です。それは権利であり自由ですから。しかし、これが「エロシーンを加えなくてはならない」になると、それは義務であり強制です。むしろ欠点になってしまう。なぜ、お金を払ってこんな不自由を受諾しなくてはならないのでしょうか。

 瀬戸口氏の過去の作品、『CARNIVAL』『SWAN SONG』は、単なるエロシーン以外の内容についても、子供に見せるべき作品だとは思いません。こういう意味の18禁版、例えば、全年齢版ではある程度の「健全」なシナリオしか作らないけれど、お金の集まった18禁版では「本気」の制約のないシナリオを追加する、といった形なら賛同する意義は多いにあろうかと思います。
 しかし、今のこの紹介ページを見る限り、資金が積まれれば積まれるほどギャルゲ化していきます。「対象攻略キャラクター数」という項目がある時点で「ゼロ」や「1」という選択肢を取り得ません。そんな制約を持ってシナリオを作ること自体が創作として変だし、歪むと思うのです。ファンディングである以上、仕上がり次第で前提条件を変更することすら出来ません。
 
 正直、これだと私にはお金を積むメリットがありません。自分で50%以上を取れれば別ですが、流石にそんな資金はないので・・・。


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