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覚え書き 

『罪と罰』(ドストエフスキー) ※出典・ページ数は岩波書店の旧版

「僕はお前に頭をさげたのではない。僕は、人類全体の苦痛の前に頭をさげたのだ。」
 (第二巻・P312)

「僕は何もお前のことを、お前の不名誉や罪悪に対してそう言ったのじゃない。お前の偉大なる苦痛に対してそう言ったのだ。もっとも、お前が偉大なる罪人だということは、それは確かにその通りだ。」
「お前が罪人である理由は、第一にお前は要でもないことに自分を殺したり売ったりしたからだ。どうしてこれが恐ろしいことでないといえるか! お前が、それほど忌み嫌っているこんな泥水の中に住んでいること、しかも同時に自分でも(ちょっと眼を開きさえすれば)自分がこんな商売をしていたって、誰を助けることにも救うことにもならないことを知っていながら、こんな生活をしていること、これがどうして恐ろしいことでないといえるか! そこで、僕がひとつ訊きたいのは、」
「お前の中にはどうしてこんな汚辱や賤劣と、それとは正反対な、美しく清い感情とが、肩をならべていられるのだろうということだ。むしろまっさかさまに水の中に飛び込んで、ひと思いに片をつけてしまったほうが、遥かに正しい、千倍も正しく賢いやりかたじゃないのだろうか!」 
 (第二巻・P313)

ラスコーリニコフには、ソーニャが自分のために読むことを躊躇した一部の理由がわかっていた。それがわかればわかるほど、いよいよいらだって、無闇に読むことを迫った。彼は今、自分というものをすべて、洗いざらいさらけだしてしまうことが、彼女にとってどんなに辛いかということを、わかりすぎるほど理解していた。
 (第二巻・P330)

「お前だって僕と同じことをしたんじゃないか。お前もやはり踏み越えたんだよ・・・踏み越えることができたんだよ、お前はわれとわが身に手をくだした。お前は一つの生命を滅ぼした・・・自分の生命を。」
 (第二巻・P325)



「どうしてあなたは、どうしてあなたは、ご自分に対してそんなことをなすったんです!」
 (第三巻・P108)

「もし僕がただ飢えてるために人を殺したのだったら。そうだったら、今ごろ僕は・・・もっと幸福でいるはずなんだ! ね、お前はそれを忘れないでおくれ!」
 (第三巻・P112)

「ところで、ソーニャ、僕も今、たった今――自分が昨日お前をどこへ連れて行こうと言ったんだったか、それがはじめてわかったんだよ。きのうああ言った時には、僕自身も、どこへだかはまるでわかってなかったんだ。頼んだもの、こうして来たのも、目的はただ一つ――お前に見捨てられたくないばかりなんだ。」
 (第三巻・P113)



彼は下へおりて、構内へ出た。と、そこに、出口から遠くないところに、死人のような顔をしたソーニャがじっと立って、恐ろしい、殺気だった眼つきで彼を見ていた。彼は彼女の前に立ちどまった。彼女の顔には、何やらいたましげな、悩みつかれたような、絶望的な色が浮かんでいた。彼女ははたと手をうちあわせた。醜い、茫然自失したような微笑が、彼の口辺に絞りだされた。彼は暫く立ちどまっていて、にたりと笑うと、また階上の警察の方へ引っ返して行った。
 (第三巻・P318)

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